2026/04/04

カーボンニュートラルの旗手として注目される小水力発電。しかし、水車や発電機の性能にばかり目を奪われ、運用後に「塵芥(ごみ)対策」で挫折するケースが後を絶ちません。
本記事では、小水力発電における除塵機の重要性から、設置しない場合のリスク、準拠すべき技術基準、そして塵芥の性質に合わせた具体的な形式の選び方までを徹底解説します。
除塵機とは、塵や土砂などを取り除くために使用する機械のことで、汚水処理施設や排水設備、中継ポンプ場において、流入する夾雑物を除去するために使われます。これを除去することによって、水流が止まるのを防ぐために除塵機設備は用いられます。
>>除塵機とは?レーキって何?その仕組みと製作工程を徹底解説!
ただ長年使用すると、チェーンのゆるみやパーツの故障により、除塵機の稼働が止まってしまうことがあります。このようなトラブルを未然に防ぐ方法ことが重要になります。
>>【コラム】除塵機でよくあるトラブル事例は?対処方法も解説!
除塵設備を構成する要素は大きく分けて、「スクリーン、除塵機、搬送設備、貯留設備、制御設備」の5つに分類されます。

スクリーンとは、塵芥を補足する設備です。
除塵機とは、スクリーンで補足された塵芥を水中から直接分離・搔揚・搬送する設備全体のことです。除塵設備の心臓部と言えます。
■搬送設備
搬送設備は、掻き揚げられた塵芥を所定の位置まで搬送する設備です。コンベヤーが該当します。
■貯留設備
貯留設備は、搬送された塵芥を一時的に貯留する設備のことです。タンクや槽の設備になります。
■制御設備
そして忘れてはならないのが、制御設備です。除塵機や搬送設備は電動駆動になりますが、その操作や制御を行う設備です。機側操作盤が該当します。
小水力発電事業において、多くの事業主や設計担当者が最も注力するのは、水車の発電効率や発電機の選定です。しかし、事業開始後に最も頭を悩ませ、収益を圧迫する要因は、実は「水」そのものではなく、水と共に流れてくる「塵芥(ごみ)」の処理にあります。小水力発電は大規模ダムとは異なり、数メートルから数十メートルという限られた有効落差を利用します。そのため、取水口のスクリーンにわずかな落ち葉や塵芥が詰まっただけでも、水路の水位が低下し、有効落差が減少することで発電出力が劇的に低下してしまいます。
例えば、有効落差が2メートルの地点で、目詰まりによって水位が10センチメートル低下した場合、それだけで発電出力は約5%失われます。これが24時間365日続けば、年間の売電収益に与える影響は無視できません。さらに、手動での除塵作業に頼る場合、大雨のたびに現場へ駆けつける人件費や、深夜・早朝の作業に伴う安全リスクも発生します。「設備は立派だが、維持管理コストが嵩んで投資回収が終わらない」という事態を防ぐためには、計画段階から「いかに塵芥を自動で、効率的に排除し続けるか」という視点が不可欠です。小水力発電の成功は、高性能な水車を選ぶこと以上に、現場の塵芥特性に合った「最適な除塵機」を選べるかどうかにかかっているといっても過言ではありません。
小水力発電において、コスト削減のために自動除塵機の導入を見送る、あるいは簡易的な固定スクリーンのみで対応しようとするケースが見られます。しかし、除塵機がない、あるいは機能不全に陥った場合に発生するリスクは、単なる発電量の低下に留まりません。最も深刻なのは、塵芥による水車の致命的な故障です。小水力発電で使用されるフランシス水車やペルトン水車は、精密な回転体で構成されています。スクリーンを通り抜けた微細な木の枝やプラスチックごみが水車内部に侵入すると、ランナー(羽根)の損傷や軸受の異常摩耗を引き起こし、数百万円単位の修繕費と数ヶ月に及ぶ発電停止を招くことになります。
また、小水力発電特有の課題として「設置場所の過酷さ」があります。多くは山間部や農業用水路に設置されますが、こうした場所では秋期には大量の落ち葉、台風時には流木や土砂が短時間に押し寄せます。固定式スクリーンでは数時間で閉塞し、行き場を失った水が水路から溢れ出す「溢水(いっすい)事故」を引き起こす危険性があります。これにより近隣の農地や民家に被害が出れば、事業の継続自体が危ぶまれます。一般的な河川用除塵機はこれらのリスクに対応できますが、小水力発電の現場は重機が入らないほど狭隘(きょうあい)な場所も多く、大規模な設備を導入するスペースも予算も限られているのが現実です。
| リスク項目 | 発生する事象 | 事業へのインパクト |
| 発電出力の低下 | スクリーン目詰まりによる水位低下(落差損失) | 売電収益の恒常的な減少(数%〜数十%) |
| 設備の物理的損傷 | 塵芥の巻き込みによる水車・ノズルの破損 | 多額の修繕費用と長期の発電停止 |
| 溢水事故 | 水路の閉塞による水のオーバーフロー | 周辺住民への損害賠償・事業停止リスク |
| 維持管理費の増大 | 出水ごとの緊急駆けつけ、手作業による清掃 | 営業利益の圧迫、作業員の安全確保困難 |
| 機器の短寿命化 | 土砂や微細塵による摺動部の異常摩耗 | 更新サイクルの短縮、ライフサイクルコスト増 |
小水力発電向け除塵機を選定する際、指針となるのが「水門鉄管技術基準」です。これは電力会社や自治体のインフラ設備において世界基準とも言える技術指針であり、設計、施工、保守管理の全てにおいて高い安全性を求めています。小水力という比較的小規模な設備であっても、この基準に準拠した設計を行うことが、長期にわたる安定稼働の絶対条件となります。特に溶接部の強度や駆動部の耐久性は、安価な汎用品とプロ仕様を分ける決定的な境界線です。規格外の設備を導入してしまうと、数年で錆による動作不良や、想定外の掻き揚げ荷重によるフレームの歪みが発生し、結果的に買い替えが必要になるなど、ライフサイクルコストを著しく押し上げます。
耐用年数については、税法上の法定耐用年数は22年とされていますが、小水力発電は20年以上の長期事業です。実務上は、主要部材に耐食性の高いステンレス(SUS304)を採用し、定期的なグリスアップや摩耗部品の交換を行うことで、50年以上の稼働も十分に可能です。また、選定において最も重要な「ビジネス上の基準」がサイズです。小水力では、水路幅を2メートル未満に設計することが、投資回収を早める秘策となります。なぜなら、幅2メートル未満であれば工場で完成させた状態で「一体型輸送」ができ、現地での組立工事を最小限に抑えられるからです。この「輸送限界」を考慮した設計ができるかどうか、そして規格基準を熟知しているかどうかが、メーカー選定の成否を分けます。
株式会社ヤマウラの除塵機が小水力発電の現場で高く評価されている理由は、単に「丈夫な機械を作る」からではありません。最大の特徴は、小水力発電の採算ラインと現場の制約を熟知した「専用設計」にあります。その象徴が、前述の「幅2メートル未満の一体型構造」です。大規模な除塵機メーカーの多くは、現場での大規模な組立て工事を前提としていますが、ヤマウラでは工場内で電気配線から動作試験までを完了させ、トラック1台で搬入・即据付が可能なパッケージを提案しています。これにより、山奥などの工事環境が厳しい現場でも、工期と人件費を劇的に圧縮することが可能になります。
さらに、ヤマウラは「機械を売って終わり」ではない、インフラのパートナーとしての付加価値を提供しています。小水力発電の導入において最も高い障壁となるのは、河川法の申請や事業計画の策定といった「ソフト面」です。ヤマウラでは大正9年の創業以来培った土木・建築・機械・電気の4部門の連携により、設計段階から申請業務、さらにはROI(投資対効果)を最大化するためのアドバイスまでを一貫して行います。また、最新の「スマート保全」への対応も強みです。IoTを活用した水位差監視や、事務所のタブレットから現地の状況を確認できるカメラ監視システム、水位上昇を検知して自動で除塵を開始する水位差運転機能など、人手に頼らない「無人化・省人化」をハードウェアとソフトウェアの両面から実現します。
続いて、実際に当社が製作した除塵機の製品事例をご紹介いたします。

こちらの除塵機は河川の本流に設置するため、1200kgf/1レーキもの大きな塵芥も処理できる強靭な構造となっています。
除塵機の操作は、タブレット端末による遠隔操作が可能なため、運転室まで階段を上り下りする必要がなく、また悪天候であっても遠隔から除塵機を管理することができます。

現地組み立てを極力無くし、組み上がった装置を現地へそのまま設置できるため、工事期間は最小限に抑えることができました。また、材質は全てステンレス製のため、錆等による修繕の必要がありません。
運転方式は手動運転に加え、タイマー運転、水位差運転機能を具備しております。

前面降下前面掻揚式除塵機は、水力発電所の沈砂池に設置する大型の固定式除塵機です。
総重量は130tを超え、東海エリア最大級のサイズを誇っています。
施工の際は、車輛での寄付きが困難な箇所であったため、河川へ台船を浮かべ曳航するという施工方法を採用いたしました。

移動ワイヤーロープ式除塵機は、水力発電所の取水口に設置する大型の移動式除塵機です。こちらの除塵機は河川の本流に設置するため、1000kgf/1レーキもの大きな塵芥も処理できる強靭な構造となっています。
豪雪地帯ということもあって、厚いコンクリート建屋に覆われており、資機材の搬入ではコンクリート壁の一部を壊して搬入致しました。又、現地までのアクセスに制約があり、1度現場に入ってしまうと1ヶ月程度下山できない過酷な状況下での施工でした。

除塵機は、農業用水路の上流等に設置し、流下する塵芥(草、流木、生活ごみ、獣等)を除去する装置です。スクリーンの目開きを大きくし、大きな塵芥を除去することを目的としております。
レーキアーム式を採用しているため、トラブル時にも断水する事なく、メンテナンスが可能です。シリンダーには油圧ではなく、電動シリンダーを選定している為、万が一にも河川に油が流出することはありません。

現地組み立てを極力無くし、組み上がった装置を現地へそのまま設置できるため、工事期間は最小限に抑えることができました。
また、材質は全てステンレス製のため、錆等による修繕の必要がありません。
運転方式は手動運転に加え、タイマー運転、水位差運転機能を具備しております。

こちらの除塵機は河川の本流に設置するため、1000kgf/1レーキもの大きな塵芥も処理できる強靭な構造となっています。
除塵機の操作は、タブレット端末による遠隔操作が可能なため、運転室まで階段を上り下りする必要がなく、遠隔から除塵機を管理することができます。

現地組み立てを極力無くし、組み上がった除塵機を現地へそのまま設置できるようにしました。そのため、工事期間は最小限に抑えることができました。また、材質は全てステンレス製のため、錆等による修繕の必要がありません。

除塵機の操作は、タブレット端末による遠隔操作が可能なため、運転室まで階段を上り下りする必要がなく、遠隔から除塵機を管理することができます。また、スクリーンの角度が直角であり覗き込んで塵芥を確認する事が困難であった為、ネットワークカメラを搭載し、安全で安心した除塵作業を実現しました。
流速が早く、塵芥がスクリーンへ張り付いてしまう為、レーキ爪の構造と角度が重要なポイントとなりました。

こちらの除塵機は河川の本流に設置され、大きな流木や塵芥の処理を想定し掻揚荷重1200kgf/1レーキもの大きく強靭な構造となっています。またコンベアは機外コンベア(別置き構造)となっております。
除塵機の操作は、タブレット端末による遠隔操作が可能なため、運転室まで階段を上り下りする必要がなく、遠隔から除塵機を管理することができます。

排水機場用除塵機1基の新設と既存機2基の整備工事となります。
排水機場の水処理設備は農地や人家、公共施設等を水害から守る為の重要な設備となります。
既存機の整備工事では土木構造物や他機器との取り合いがとても重要な為、3Dスキャナを使って綿密に測量し、完成後のイメージが正確に把握できる様、心掛けました。
除塵機にお困りの方は、インフラ技術ナビ.comを運営するヤマウラエンジニアリング事業部までお問い合わせください!
★既存の除塵機のリプレイスやメンテナンスいたします!遠隔操作やリアルタイムでのモニタリング等のIoTによるスマート保全対応!
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