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樋門とは?構造・役割から維持管理の要点まで【水門管理のプロが解説】

2025/04/24

樋門(ひもん)とは、堤防に設けられたゲート付き水路構造物です。洪水防御、排水、利水の役割を担い、フラップ、スライド、ローラーゲートなどの種類があります。設計・維持管理のポイント、水害時の対応、製品事例、そしてヤマウラの樋門製作への取り組みをご紹介します。

樋門とは?樋門の定義と基本的な役割

樋門(ひもん)とは、主に河川や湖沼、海岸堤防などの堤防や護岸を横断して設けられる水路構造物であり、ゲート(扉)を備えている点が特徴です。このゲートの開閉操作によって、水路の水位や流量を調整し、洪水や高潮などの災害を防いだり、農業用水や工業用水、あるいは生活排水などを効率的に流したりする役割を担います。

樋門の主な役割は、以下の3点です。

洪水防御
大雨や台風などにより河川水位が上昇した際に、樋門を閉鎖することで、河川水が背後の低地や市街地へ逆流するのを防ぎます。これにより、浸水被害の拡大を抑制し、人々の安全と財産を守ります。

排水機能
平常時には、内水(雨水や生活排水など)を河川や下水路へ排水する役割を担います。これにより、農地や市街地の浸水被害を防ぎ、衛生的な環境を維持します。

利水機能
農業用水や工業用水などを必要な時に水路へ取り込んだり、逆に余剰な水を排出したりする役割を担います。これにより、農業生産や工業活動、人々の生活に必要な水を安定的に供給します。

このように、樋門は治水・利水の両面において、社会基盤を支える上で不可欠な施設と言えます。その適切な設計、施工、そして維持管理は、安全で豊かな社会生活を送るために極めて重要な要素となります。

樋門の主要な構造と形式

ここでは、樋門の代表的なゲート(門扉)の種類と、水を通すための「樋管(ひかん)」について解説します。

主なゲートの種類

樋門に使われる代表的なゲート形式は、次の3つです。

① フラップゲート
ゲートの上端を支点として、水の圧力や自重で自動的に開閉する仕組みです。

特徴:水位差が小さい場所に適しており、一方向の水の流れを制御します。

利点:洪水時には水圧で自動的に閉じ、通常時には自重や手動で簡単に開けられるため、管理が比較的容易です。

② スライドゲート
ゲートが上下や左右にスライドして開閉する形式です。

特徴:高い水圧にも対応可能で、確実に止水できます。

利点:さまざまな大きさ・形状があり、広い用途で使用されます。通常は機械装置によって操作されます。

③ ローラーゲート
鋼鉄などでできた開閉用ゲートの板に、ローラを取り付けたものです。スピンドルやワイヤードラムを使用して、門を垂直に持ち上げて上下に開閉します。

特徴:大きなサイズでも比較的少ない力で動かせるのが特徴です。

利点:主に大きな河川やダムなど、大規模施設で使用されます。

樋管を伴う構造


樋門には「樋管(ひかん)」と呼ばれる、水を通すための構造が一体になっていることがあります。
これは、ボックスカルバート(箱型の水路)やパイプ(管状)の形式で堤防や護岸を貫通するように設置され、水の通り道を確保します。

この樋管の中にゲートを設置して水の流れを調整します。堤防の強度を損なわず、一定の水量を効率的に流すことができます。主に農業用水路や小規模な排水路などでよく見られる構造です。

樋門の設計における重要なポイント

水理設計

樋門の水理設計では、計画流量の設定が重要です。過去の観測データや将来の気候変動予測を踏まえ、最大・最小・通常時の流量を考慮して設計します。また、流速が構造物に与える影響や、土砂の堆積・洗掘といったリスクを最小限に抑える工夫も必要です。ゲート操作によって発生する水位差が、周辺環境や農業利用に悪影響を及ぼさないような設計配慮も求められます。


地盤に適した構造設計

樋門の安定性を確保するためには、地盤調査を実施し、支持力や透水性を把握することが不可欠です。地盤条件に応じて、直接基礎や杭基礎を選定し、必要に応じて地盤改良を行います。また、構造計算に基づいて部材の強度や寸法を決定し、全体荷重に耐えうる設計を行います。特に、液状化の可能性がある地盤では、地盤改良や基礎形式の工夫が必要です。


耐久性と耐震性

長期的な使用を前提とした樋門には、耐久性の高い材料の選定と防食対策が必要です。鋼材には塗装や電気防食などの処理を施し、腐食環境にも耐えられる設計とします。また、日本のような地震多発国では、地震時の動きに耐えうる構造設計が不可欠です。構造体やゲート、駆動装置などが地震により損傷・機能不全を起こさないよう、事前の地震動評価に基づいた設計が求められます。

これらの要点を適切に反映することで、安全かつ長寿命な樋門の整備が実現でき、持続可能な水管理にもつながります。

樋門の維持管理:安全かつ効率的な運用のために

樋門の点検

樋門の維持管理の基本は、定期的な点検です。​点検には、日常点検と定期点検があります。​

日常点検
操作員が日常的に目視で行い、ゲートの開閉状況、異音や振動の有無、漏水、ゴミの詰まりなどを確認します。​異常が発見された場合は速やかに報告し、必要に応じて簡単な清掃や給油などを行います。​

定期点検
年に一度または数年に一度、専門の技術者が詳細な点検を行います。​構造物の変形やひび割れ、ゲートや駆動装置の摩耗や腐食、電気設備の絶縁状態などを専用の機器を用いて詳細に調査します。​この点検の結果に基づいて、補修計画や更新計画が策定されます。​

点検時には、ゲートの動作状況、止水性、駆動装置の状態、構造物の状態、付帯設備の損傷、周辺状況などに特に注意を払う必要があります。​


補修・更新のタイミングと方法

点検の結果、異常が発見された場合は、早期に適切な補修を行うことが重要です。​放置すると、損傷が拡大し、大規模な更新が必要になったり、最悪の場合、樋門の機能不全や事故につながる可能性があります。​

  • 補修:​小規模なひび割れや剥離、軽微な腐食などは、早期に補修することで延命化を図ります。​コンクリートの断面修復、鋼材の補修塗装、パッキンの交換などが一般的な補修方法です。​
  • 更新:​構造物の老朽化が著しい場合や、機能向上が必要な場合には、更新を検討します。​ゲートの近代化、駆動装置の交換、樋門全体の改築など、様々な更新方法があります。​更新の際には、最新の技術や材料を導入することで、耐久性や操作性の向上を図ることが重要です。​

補修や更新のタイミングを適切に判断するためには、定期的な点検による詳細なデータ収集と、専門家による適切な診断が不可欠です。​長期的な視点に立ち、ライフサイクルコストを考慮した維持管理計画を策定することが重要となります。​


水害時など緊急時の対応

水害発生時など、緊急時には樋門の迅速かつ適切な操作が求められます。​そのため、平時から操作手順を明確化し、操作員の訓練を徹底しておく必要があります。​

  • 操作手順書の作成
    ゲートの開閉手順、連絡体制、緊急時の対応などを詳細に記載した操作手順書を作成し、関係者全員が熟知しておく必要があります。​
  • 訓練の実施
    定期的にゲートの開閉訓練や緊急対応訓練を実施し、操作員の技能向上を図ります。​夜間や悪天候時など、様々な状況を想定した訓練を行うことが重要です。​
  • 連絡体制の構築
    関係機関との連絡体制を明確にし、緊急時には迅速かつスムーズな情報共有と連携ができるようにしておく必要があります。​
  • 予備電源の確保
    停電時にもゲート操作が可能なように、予備電源(発電機など)を確保しておく必要があります。

適切な維持管理と緊急対応体制を整備することで、樋門は常にその機能を最大限に発揮し、私たちの安全な生活を支え続けることができます。​

樋門・水門に関する製品事例

続いて、実際に当社が製作した水門の製品事例をご紹介いたします。

鋼製スライドゲート


鋼製スライドゲート

こちらは、当社が製作した鋼製スライドゲートです。

こちらの鋼製スライドゲートはもともと手動の開閉装置でしたが電動化いたしました。

当初、開閉装置のみの取替計画でしたが、老朽化により強度不足となった門扉の更新も新たに提案し、お客様の設計条件を満足した設備を納入することが出来ました。

>>詳細はこちら

ヤマウラだから製作できる樋門水門

インフラ技術ナビを運営しているヤマウラでは樋門・水門の加工・製作にあたり以下の取り組みを実施しています。

各種水門・樋門の製作、対応可能!


【コラム】溶接定盤 これがないと精密な組立ができない!?

長野県駒ケ根を拠点とする製缶加工メーカーのヤマウラでは、長年の製缶技術や豊富な実績を活かし、設計から現地据え付けまで一貫してお任せいただけます!

スライドゲート、ローラーゲート、転倒ゲート、フラップゲート等、多数の水門の製作実績があり、設置予定場所の現地調査を含め、水門・ゲートの設計提案も得意としております。

設計段階から対応可能!


【水門・除塵機】インフラ用巻き上げワイヤードラム 重要な2つの選定ポイント

当社ヤマウラは、豊富な提案実績をもつ設計エンジニアや有資格技術者が多数在籍しております。

設置する箇所の土木構造(水路径間、水路高)や設計条件(設計水深、操作水深、洪水水位、堆砂高等)等をご教示いただけますと、性能はもちろんのこと、安全、コスト、デザイン、納期、自社製造の強みを生かし様々な要望にお応えすべく、色々なご提案させていただきます。

樋門のことなら、ヤマウラまで!

樋門にお困りの方は、インフラ技術ナビ.comを運営するヤマウラエンジニアリング事業部までお問い合わせください!

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